楽天の購買データを基とした広告で、インターネット広告が抱える課題解決に挑む 「日本のインターネット広告の父」である有馬誠氏が目指す、究極のデジタルマーケティングに迫る
右肩上がりで成長を続ける、インターネット広告市場。電通が2月に発表した「2018年(平成30年)日本の広告費」によると、インターネット広告費は1兆7589億円(前年比116・5%)であった。これは、地上波テレビ広告費の1兆7848億円に肉薄する規模で、総広告費の26.9%を占めるまでになっている。そんなインターネット広告市場の黎明期から携わり、「日本のインターネット広告の父」と呼ばれるのが、有馬誠氏である。ヤフーの第一号社員であり、グーグル日本法人の元代表、現在は楽天の副社長や楽天データマーケティングの代表取締役を務めている。文字通りインターネット広告と共に走り続けてきた有馬氏が感じている課題、そして楽天データマーケティングで仕掛けようとしていることを伺った。
楽天株式会社 副社長執行役員CROメディア&スポーツカンパニー プレジデント
楽天データマーケティング株式会社 代表取締役社長
楽天アドロール株式会社 代表取締役会長
有馬誠 氏
インターネット黎明期の1996年、ヤフーに第一号社員として入社し、その後グーグルの代表取締役を務めるなど日本のインターネット広告の発展を支えた。2017年7月、楽天の副社長執行役員CRO(チーフレベニューオフィサー)に就任。同時に楽天と電通によるジョイントベンチャー、楽天データマーケティングの代表取締役社長に就任し、同年10月に営業を開始した。
インターネット広告と、有馬氏との出会い
──「働きがいのある会社」をつくるために、人事としてどんなところに着目し、どのような施策を実行したのでしょうか?
しかし、インターネットワールドの来場者は広告関係者ばかり。全体的に若く、雰囲気が全く異なりました。そこでひときわ熱気を感じたのが、「メディアとしてのインターネットの可能性」をテーマとしたプレゼンテーションです。イメージ(画像)も音声も扱えるインターネットは、メディアとして広告業界から注目を集めており、既に事例もあるというのです。これを聞いて会場は大盛り上がりでしたし、当時主流だったテキストベースのパソコン通信とのギャップに、私も「インターネットというメディアには、広告ビジネスの可能性が広がっている」と直感しました。その代表例が米国のヤフーで、当時すでに「検索エンジン+広告」というビジネスモデルの象徴的な存在として知られていたんです。ものすごいことが起ころうとしている……そんな衝撃を受け、日本に帰国しました。
それからしばらくして、「ソフトバンクが日本でヤフーの日本法人を立ち上げるので、営業責任者をやってくれないか」とヘッドハンターから連絡がありました。ヤフーの営業責任者、つまりはインターネット広告の営業。その立ち上げを任される……これは、またとないチャンスだと思い即決しました。新しい産業の誕生に立ち会うチャンスは一生に一度あるかないか。この好機を逃す手はないと、家族も説得して、挑戦することを決めました。
――そして、1996年のヤフー創業時に第一号社員として入社され、日本国内でインターネット広告という新たな市場を開拓してこられます。しかし当時は、企業も「インターネット広告って何?」という時代だったのではないですか?
有馬 「バナーとは何ですか?」というような質問に、ゼロから答えていくような状況でしたよ。一部上場企業でも、ホームページを持っている企業は数パーセントという時代ですからね。逆に言うと、その数パーセントの企業に営業に行けばいいのですから、ターゲットは明確でした。
――有馬さんがこの20年あまりのご経験を通して実感していらっしゃる、インターネット広告を成功させるためのポイントとは何でしょうか。
――「楽天主義」の考え方にもあるスピード!! スピード!! スピード!! ですね。
有馬 そうですね。テレビの課題というのは一つここにあります。データは出てくるのですが、時間がかかる。そこからプランニングを始めて、となると3カ月~半年は経ってしまいます。そうこうしているうちに、場合によっては在庫が積みあがってしまうかもしれないし、他の企業にシェアで水をあけられてしまうかもしれません。「まずい」と思ったら、すぐに手を打てるサイクルを作っておかないと、ビジネスのリスクはどんどん膨らみます。ですから、早く改善できるサイクルに、いち早く持ち込む、これが大事です。
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